8士業と10士業の違い

法律系の資格を調べていると「8士業」「10士業」という言葉を目にすることがあります。これらは特定の士業資格をグループとして呼ぶ通称で、住民票や戸籍など特定書類の職務上請求ができるかどうかという重要な違いがあります。本記事では、8士業・10士業それぞれに含まれる資格と、その違いについてわかりやすく解説します。

8士業・10士業とは?

「士業」とは、名称や業務が法律で定められた国家資格の総称で、資格名に「士」の字が付くものが多いことからこう呼ばれます。その中でも法律実務に携わる主要な8つの資格をまとめて「8士業」、さらに2つを加えた10資格を「10士業」と呼びます。

8士業
  • 弁護士
  • 司法書士
  • 行政書士
  • 社会保険労務士
  • 弁理士
  • 税理士
  • 土地家屋調査士
  • 海事代理士

10士業(8士業+2)
  • 弁護士
  • 司法書士
  • 行政書士
  • 社会保険労務士
  • 弁理士
  • 税理士
  • 土地家屋調査士
  • 海事代理士
  • 不動産鑑定士
  • 建築士

💡 POINT
10士業は8士業を内包しています。つまり「8士業はすべて10士業にも含まれる」関係です。8士業にしか含まれない資格はなく、10士業にのみ含まれるのが不動産鑑定士建築士の2資格です。

最大の違い:職務上請求とは

8士業と10士業の最大の違いは、「職務上請求」ができるかどうかです。

📋 職務上請求とは
士業の専門家が、業務上必要な場合に限り、依頼者本人に代わって住民票・戸籍謄本などの公的書類を取得できる制度です。通常、これらの書類は本人や家族しか請求できませんが、8士業の資格者は「職務上請求書」という専用書式を使って、正当な業務目的の範囲内で第三者の書類を取得することが認められています。

たとえば、司法書士が相続登記を行う際に被相続人の戸籍を収集したり、行政書士が在留資格申請のために住民票を取得したりするケースが該当します。

区分 職務上請求 対象書類
8士業 できる 住民票・戸籍謄本・戸籍附票など
10士業のみ(不動産鑑定士・建築士) ❌ できない
⚠️ 職務上請求は正当な業務目的の範囲内でのみ認められており、目的外使用は厳しく罰せられます(不正取得は刑事罰の対象)。また弁護士・司法書士・土地家屋調査士・行政書士の4士業については、さらに広い範囲の書類請求が認められています。

8士業に含まれる資格

⚖️
弁護士
根拠法:弁護士法

8士業
法曹
訴訟代理

法律業務全般を扱う法曹三者の一角。訴訟代理・法律相談・示談交渉など法律に関するほぼあらゆる業務を行うことができます。他の士業が行える業務のほとんどを弁護士も行うことができ、士業の中で最も広範な業務範囲を持ちます。

職務上請求の範囲:戸籍・住民票等、最も広い範囲で請求可能

📝
司法書士
根拠法:司法書士法

8士業
登記
裁判書類

不動産・法人の登記申請書類の作成・代理が主な業務。相続登記や会社設立登記など、法務局への手続きに関するプロフェッショナルです。認定司法書士は140万円以下の民事紛争について簡易裁判所での訴訟代理も行えます。

職務上請求の活用例:相続登記のための被相続人・相続人の戸籍収集

🏛️
行政書士
根拠法:行政書士法

8士業
許認可
在留資格

官公署への申請書類作成・代理を専門とする資格。建設業許可・飲食店営業許可・外国人の在留資格申請など、行政手続き全般を幅広く担います。独立開業しやすい資格として知られ、毎年多くの方が目指す人気資格です。

職務上請求の活用例:在留資格申請のための住民票取得、相続手続きのための戸籍収集

👔
社会保険労務士(社労士)
根拠法:社会保険労務士法

8士業
労務管理
社会保険

労働・社会保険に関する法律の専門家。企業の人事・労務管理から社会保険手続きまで幅広く担います。年金・労働保険に関する書類作成は社労士の独占業務であり、企業の法令遵守に欠かせない存在です。

職務上請求の活用例:遺族年金請求のための戸籍謄本・住民票の取得

🌏
弁理士
根拠法:弁理士法

8士業
知的財産
特許・商標

特許・商標・意匠など知的財産権の専門家。発明や商標を保護するための出願代理が主な業務です。技術的知識と法律知識を兼ね備えた専門職として、メーカーや特許事務所で高い需要があります。

職務上請求の活用例:相続による特許権移転手続きのための戸籍収集

🧾
税理士
根拠法:税理士法

8士業
税務申告
確定申告

税務申告・税務相談の専門家。個人・法人を問わず、税務書類の作成・代理が独占業務です。相続税申告では戸籍謄本など多くの公的書類が必要になるため、職務上請求が重要な役割を果たします。

職務上請求の活用例:相続税申告のための相続関係を証明する戸籍謄本の収集

🗺️
土地家屋調査士
根拠法:土地家屋調査士法

8士業
表示登記
土地測量

土地・建物の現況を調査・測量し、表示に関する登記申請を代理する専門家。新築時の建物表示登記や土地の分筆・合筆登記は土地家屋調査士だけが代理できます。

職務上請求の活用例:相続による表示登記のための相続関係書類の取得

🚢
海事代理士
根拠法:海事代理士法

8士業
海事法務
船舶登録

船舶の登録・検査申請など、海事に関する行政手続きを代理する専門家。「海の行政書士」とも呼ばれ、海運業界では欠かせない存在です。8士業の中では最もニッチな資格ですが、競合が少なく専門性が高い点が特徴です。

職務上請求の活用例:船員に関する各種手続きのための住民票・戸籍の取得

10士業に含まれる資格(8士業との違い)

以下の2資格は10士業には含まれますが、8士業には含まれません。職務上請求権は持たないものの、国家資格として重要な独占業務を持つ専門職です。

🏢
不動産鑑定士
根拠法:不動産の鑑定評価に関する法律

10士業のみ
鑑定評価
土地評価

不動産の経済価値を判定・評価する専門家。公示地価の評価や相続・裁判に用いる不動産鑑定評価書の作成は不動産鑑定士だけが行える独占業務です。合格者数が少なく希少価値が高い難関資格です。

8士業との主な違い:職務上請求権なし。業務上、住民票・戸籍を取得する必要性が低いため対象外とされています。

📐
建築士(一級・二級・木造)
根拠法:建築士法

10士業のみ
建築設計
工事監理

建物の設計・工事監理を行う国家資格。建物の規模によって一級・二級・木造建築士の区分があり、一定規模以上の建築物の設計・工事監理は建築士でなければ行えません。設計事務所・ゼネコン・ハウスメーカーなど幅広い分野で活躍できます。

8士業との主な違い:職務上請求権なし。設計・施工監理業務では公的個人情報書類の取得が必要となるケースがほとんどないため対象外とされています。

一覧表まとめ
資格名 8士業 10士業 職務上請求 主な業務
弁護士 訴訟代理・法律相談
司法書士 登記申請書類の作成・代理
行政書士 官公署への申請書類作成
社会保険労務士 労働・社会保険書類の作成
弁理士 特許・商標の出願代理
税理士 税務申告・税務相談
土地家屋調査士 表示登記申請の代理
海事代理士 海事行政手続きの代理
不動産鑑定士 不動産鑑定評価書の作成
建築士 建築物の設計・工事監理

▍まとめ

8士業と10士業の最大の違いは「職務上請求権の有無」です。8士業はすべて職務上請求権を持ち、業務上必要な場合に住民票・戸籍謄本などの公的書類を取得できます。一方、10士業のみに含まれる不動産鑑定士・建築士はこの権限を持ちません。資格選びの際は「どんな業務を担うか」だけでなく、こうした法的権限の違いも理解しておくと、資格の活かし方がより明確になるでしょう。

目次