木造建築士(都道府県知事免許)
受験資格
学歴+実務経験(組み合わせによる)
大学卒業なら実務経験ゼロで受験可。高校卒業は2年以上の実務経験が必要
難易度
★★★
学科合格率39%・製図合格率47%。二級建築士よりやや合格しやすい水準
勉強時間の目安
学科:200〜400時間 / 製図:100〜150時間
建築系学部卒・実務経験者はより短縮可能
合格率
学科:約39% / 製図:約47%
合格基準:各科目13点以上・総得点60点以上(学科)
試験・受験料
年1回(学科7月・製図10月)・18,500円(非課税)
2026年:学科7月26日・製図10月11日。申込4月上旬〜中旬
木造・伝統建築需要
★★★
木造住宅・神社仏閣・古民家再生・伝統建築の専門家として活躍
木造建築物の設計・工事監理を専門とする建築士として、古民家再生・神社仏閣・木造住宅分野で活躍できる国家資格が木造建築士です。建築士法に基づく都道府県知事免許として、一級建築士・二級建築士とともに建築士制度を構成しています。木造建築物に特化した専門知識が問われる試験は、二級建築士よりやや合格しやすい水準で、年間約40万戸を占める木造住宅新設市場や、伝統的木造建築の維持・修繕を担う専門家として需要が高まっています。
2025年の法改正により木造建築士の業務範囲が拡大され、省エネ・耐震性能を満たした木造住宅設計への需要増とともに、木造建築士の社会的位置づけはさらに重要性を増しています。
木造建築士とはどんな資格か
木造建築士は、建築士法第3条の3に基づく国家資格で、木造の建築物のうち一定規模以下のものについて設計・工事監理を行うことができる資格です。都道府県知事から免許が交付される点(一級建築士は国土交通大臣免許)が特徴で、試験も各都道府県が実施します(実施業務は公益財団法人建築技術教育普及センターに委託)。
木造建築士が担える建築物は「木造で2階建て以下かつ延べ面積が100㎡超300㎡以下」の範囲を超える設計・工事監理ができますが、その専門性は木造建築物に特化した深い知識にあります。一般的な住宅設計だけでなく、神社・仏閣・社寺建築・伝統的木造家屋など、二級建築士では賄いきれない木造特有の構造・材料・施工技術の専門知識を持つ点が強みです。
一級・二級建築士との違い
| 項目 | 木造建築士 | 二級建築士 | 一級建築士 |
|---|---|---|---|
| 免許の種類 | 都道府県知事免許 | 都道府県知事免許 | 国土交通大臣免許 |
| 設計・監理できる建物 | 木造建築物(一定規模以下) | 木造・RC・鉄骨等(一定規模以下) | すべての建築物 |
| 主な活躍分野 | 木造住宅・神社仏閣・伝統建築・古民家再生 | 一般的な住宅・店舗・小規模建築全般 | 大規模建築・高層建築・公共施設等 |
| 学科試験合格率 | 約39% | 約40〜50% | 約20% |
| 受験料 | 18,500円 | 18,500円 | 17,000円 |
| 専門性の特徴 | 木造建築の構造・材料・伝統技術に特化 | 幅広い構造・用途に対応 | 設計から法規・構造まで全般的な高度知識 |
木造建築士は「二級建築士の下位資格」と誤解されることがありますが、実際は木造建築物に特化した深い専門知識を持つ独自の資格です。木造の専門家として神社仏閣・伝統建築の設計・修繕など、二級建築士では対応が難しい分野で活躍できます。
受験資格:学歴と実務経験の組み合わせ
木造建築士試験の受験資格は、建築士法第15条に定められた「学歴要件」と「実務経験年数」の組み合わせで決まります。
| 学歴要件 | 必要な実務経験年数 |
|---|---|
| 大学(指定科目修了)卒業 | 不要(卒業直後に受験可) |
| 短期大学(指定科目修了)卒業(3年以上・指定科目修了) | 不要 |
| 短期大学(指定科目修了)卒業(2年・指定科目修了) | 1年以上 |
| 高等専門学校(指定科目修了)卒業 | 不要 |
| 専修学校(2年以上・指定科目修了)卒業 | 1年以上 |
| 高等学校・中等教育学校(指定科目修了)卒業 | 2年以上 |
| 実務のみ(学歴要件なし) | 7年以上 |
| 二級建築士免許取得者 | 不要(二級建築士として免許を持っていれば受験可) |
「指定科目」とは建築士法施行規則で定められた建築に関する科目のことで、卒業した学校の科目が指定科目に該当するかどうかは学校に確認が必要です。また実務経験は建築士試験のウェブサイトに掲載された「実務経験として認められる業務」に従事した期間に限られます。受験前に必ず自分の実務経験が該当するか確認してください。
試験の構成:学科と設計製図の2段階
| 試験区分 | 科目 | 出題形式・問題数 | 試験時間 | 合格基準 |
|---|---|---|---|---|
| 学科の試験 | 学科Ⅰ(建築計画)+学科Ⅱ(建築法規) | 五肢択一式・各25問(計50問) | 180分 | 各科目13点以上 |
| 学科Ⅲ(建築構造)+学科Ⅳ(建築施工) | 五肢択一式・各25問(計50問) | 180分 | 各科目13点以上かつ総得点60点以上 | |
| 設計製図の試験 | 設計製図(木造建築物の設計図書の作成) | 公表された課題に基づく製図 | 300分(5時間) | 総合評価(合否判定基準は非公表) |
学科試験は4科目・合計100問を午前(Ⅰ・Ⅱ)と午後(Ⅲ・Ⅳ)に分けて実施します。合格基準は「各科目13点以上かつ総得点60点以上」で、1科目でも12点以下だと不合格になる足切り制度があります。設計製図試験の課題は学科試験の実施日より前(例年6月頃)にセンターのウェブサイトで公表されます。
学科試験の出題内容
| 科目 | 主な出題内容 |
|---|---|
| 学科Ⅰ:建築計画 | 木造建築の計画・住宅計画・伝統木造建築の様式・採光・換気・音響・熱環境・建築史 |
| 学科Ⅱ:建築法規 | 建築基準法(用途・構造・防火・避難・確認申請)・建築士法・都市計画法・消防法の基礎 |
| 学科Ⅲ:建築構造 | 木造軸組構法・木材の性質と強度・接合部・耐震・耐風・構造計算の基礎・各種木造工法 |
| 学科Ⅳ:建築施工 | 木造建築の施工方法・工程管理・仮設工事・地盤・基礎・木工事・内外装工事・積算の基礎 |
木造建築士の学科試験は木造建築に特化した内容が多く、特に「学科Ⅲ(建築構造)」では木材の性質・木造軸組工法の構造力学・接合部の設計など、木造特有の専門知識が出題されます。二級建築士の学科試験と出題範囲が重複する部分も多いため、二級建築士の学習経験がある方には有利です。
設計製図試験の特徴
設計製図試験は、事前に公表された木造建築物の課題(例:「木造一戸建て住宅」「木造の小規模施設」等)について、与えられた設計条件をもとに平面図・立面図・断面図・矩計図等の設計図書を5時間で手書き作成します。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 課題の公表 | 試験年の例年6月頃、センターのウェブサイトで公表 |
| 作図内容 | 平面図(各階)・立面図・断面図・矩計図・その他(課題に応じて指定) |
| 試験時間 | 300分(5時間)・休憩なし |
| 使用道具 | 鉛筆・シャープペン・三角スケール・三角定規・コンパス等(電卓使用可) |
| 評価のポイント | 設計条件の充足・法令遵守・構造の合理性・製図の正確さ・図面の総合的なクオリティ |
| 学科免除制度 | 令和2年以降に学科試験に合格した方は、合格年を含む4回の試験のうち2回の学科試験が免除 |
令和8年(2026年)試験日程
| スケジュール | 日程(令和8年) |
|---|---|
| 受験申込期間 | 2026年4月上旬〜中旬(インターネット申込・郵送申込) |
| 受験資格判定書類の提出期限 | 2026年4月17日(金)(当日消印有効) |
| 設計製図試験の課題公表 | 2026年6月頃(センターウェブサイトで公表) |
| 学科の試験 | 2026年7月26日(日) |
| 学科試験合格発表 | 2026年8月下旬予定 |
| 設計製図の試験 | 2026年10月11日(日) |
| 設計製図試験合格発表 | 2026年12月上旬予定 |
| 受験料 | 18,500円(非課税)+事務手続手数料(クレジット306円・コンビニ225円) |
| 試験会場 | 住所地の都道府県会場(全国47都道府県に1会場以上) |
| 主催 | 各都道府県知事(実施委託:公益財団法人建築技術教育普及センター) |
木造建築士で開けるキャリア
木造住宅の設計・工事監理
年間約40万戸を占める木造住宅(木造在来工法・ツーバイフォー等)の設計・工事監理は、木造建築士の最もスタンダードな業務フィールドです。工務店・設計事務所・ハウスメーカーのグループ企業での木造住宅設計担当として、住宅オーナーの希望を実現する提案・設計・監理業務を担います。
神社・仏閣・社寺建築の専門家として
京都・奈良をはじめとする歴史的木造建築の設計・修繕・改修には、木造の伝統的な構法・材料・意匠に精通した専門家が必要です。木造建築士は「伝統木造建築の専門家」として、社寺建築専門の設計事務所・文化財修理専門企業での活躍が期待されます。こうした分野は二級建築士・一級建築士だけではなく、木造特有の専門性を持つ木造建築士が高く評価される場面です。
古民家再生・リノベーション
空き家問題・古民家の再活用ニーズを背景に、古民家再生・リノベーションの専門家としての需要が増しています。木造建築士が持つ伝統的木造構法の知識・木材の劣化判断・耐震補強の専門性は、古民家再生事業者・リノベーション会社で直接活かせます。地方移住・農村部での活動基盤を持つ場合は特に需要が高い分野です。
二級建築士・一級建築士へのステップアップ
木造建築士を取得した後、二級建築士・一級建築士へのステップアップを目指す方も多くいます。木造建築士の学習内容(建築計画・建築法規・建築構造・建築施工)は二級建築士試験と大きく重複しているため、木造建築士合格後に二級建築士を目指すルートは効率的です。業務範囲の拡大・社内での評価向上・独立開業の幅を広げるために、二級建築士の取得を次の目標に設定することが推奨されます。
難易度と学習の進め方
| 受験者の背景 | 学科勉強時間の目安 | 製図勉強時間の目安 |
|---|---|---|
| 建築系学部卒・木造設計の実務経験あり | 100〜200時間 | 50〜80時間 |
| 建築系学部卒・実務経験なし | 200〜300時間 | 80〜120時間 |
| 高校・専門学校卒・木造の実務経験あり | 200〜350時間 | 100〜150時間 |
| 実務のみのルートで受験(7年以上) | 300〜400時間 | 120〜150時間 |
合格のための学習戦略
学科:過去問の反復と木造特有の知識の強化
木造建築士の学科試験は過去問からの出題が多く、過去問5〜7年分を繰り返し解くことが最も効率的な対策です。建築法規は法令集(建築基準法令集)の持ち込みが認められているため、法令集の引き方・よく出る条文の場所を把握しておくことが得点力アップの鍵です。建築構造は木材の材料特性・木造軸組の構造計算・接合金物の知識が頻出で、木造建築士固有の出題傾向を押さえることが重要です。
製図:課題公表後すぐに対策を開始する
設計製図試験の課題は学科試験の約1ヶ月前に公表されます。学科試験の対策と並行しながら課題の内容を確認し、学科試験終了後すみやかに製図対策に集中する計画を立てましょう。製図試験は5時間(300分)という長丁場のため、実際に時間を計りながら図面を描く練習を繰り返すことが不可欠です。矩計図(断面詳細図)は木造建築士試験の特徴的な出題で、木造の納まり・構造を正確に図面で表現できるように繰り返し練習しましょう。
よくある質問
Q. 木造建築士と二級建築士はどちらを先に取るべきですか?
最終的に二級建築士の取得を目指す場合は、木造建築士を先に取得する必要はなく、直接二級建築士を目指すほうが効率的です。木造建築士は木造建築の専門性に特化した資格として独自の価値がありますが、業務範囲は二級建築士のほうが広いためです。ただし「木造・伝統建築に特化したキャリアを歩みたい」「木造建築士の受験資格は満たしているが二級建築士の受験資格がない」という場合は木造建築士から挑戦する意味があります。
Q. 学科試験に合格した年に製図試験を受験しなくても大丈夫ですか?
学科免除制度により、令和2年以降に学科試験に合格した方は合格年を含む4回の試験のうち2回(製図試験を欠席した場合は3回)の学科試験が免除されます。つまり学科に合格した年に製図を受験しなくても、一定期間内は学科を再受験せずに製図のみを受験できます。ただし免除期間を超えると学科から再受験が必要になります。
Q. 実務経験として認められる業務はどんなものですか?
建築物の設計・工事監理・施工管理などの実務が対象ですが、詳細な要件は建築士試験の受験資格に関する規定で定められています。建築会社での現場監督・設計補助・積算業務なども一定の条件で認められる場合がありますが、コールセンターや事務作業などは認められません。自分の実務が該当するかどうか不明な場合は、公益財団法人建築技術教育普及センターまたは住所地の都道府県庁に確認してください。
まとめ
木造建築士は、木造住宅・神社仏閣・古民家再生など木造建築物の専門家として活躍するための国家資格です。学科合格率39%・製図合格率47%と、一級建築士より取り組みやすい難易度ですが、確実な合格には計画的な準備が必要です。
2026年(令和8年)の試験日程は学科試験7月26日・設計製図試験10月11日で、申込受付は4月上旬〜中旬です。まず公益財団法人建築技術教育普及センター(jaeic.or.jp)の公式サイトで受験資格・申込方法の最新情報を確認し、早めに準備を進めましょう。
