アクチュアリー(保険数理士・日本アクチュアリー会正会員)
受験資格
1次:満18歳以上(大学卒業相当)
2次:1次5科目合格の準会員。大学生・社会人も受験可
難易度
★★★★★
各科目合格率10〜30%・全科目合格まで平均5〜10年の超難関
勉強時間の目安
1科目300〜500時間
全7科目で2,000〜3,500時間以上。働きながら数年かけるのが一般的
合格率
各科目10〜30%程度
2025年度の全科目合格・正会員承認は96名。正会員総数約2,300名
試験・受験料
年1回(12月)・CBT方式・1科目8,500円
1次マークシート・2次論述。各科目180分。会員は別途年会費
保険・年金・金融需要
★★★★★
保険・年金業界の最高峰の数理専門職。高収入・希少価値が極めて高い
確率・統計などの数理的手法を用いて、保険・年金・リスクマネジメントなどの分野で将来の不確実な事象を評価する数理業務のプロフェッショナルがアクチュアリー(保険数理士)です。公益社団法人日本アクチュアリー会が実施する資格試験に合格し、所定の研修を修了することで「正会員(フェローシップ)」として認定されます。保険料率の設定・責任準備金の算定・年金財政の検証など、保険・年金事業の根幹を数理面から支える、極めて専門性の高い職業です。
アクチュアリー試験は「全科目合格まで平均5〜10年かかる超難関」として知られ、各科目の合格率は10〜30%程度です。その難関さゆえに有資格者は希少で、保険会社・信託銀行・コンサルティングファームなどで高く評価され、高収入を得られる職業として理系出身者を中心に人気を集めています。
アクチュアリーとはどんな資格か
アクチュアリーは、確率論・統計学・数理モデルなどを駆使して、保険や年金に関するリスクを評価・管理する専門家です。「保険数理士」とも呼ばれ、英語では「Actuary」と表記します。具体的には、生命保険・損害保険の保険料の算定、保険会社の責任準備金(将来の保険金支払いに備える積立金)の評価、企業年金制度の財政検証、リスク管理のための数理モデルの構築などを担います。
アクチュアリーの活躍フィールドは、超長期にわたるリスクを評価する生命保険分野、多様化・複雑化するリスクを分析する損害保険分野、年金数理の専門知識で企業年金制度の課題を解決する年金分野が中心です。近年はこれらに加えて、確率・統計のノウハウを活かしたリスクマネジメント分野(ERM)でも活躍するアクチュアリーが増えています。
資格取得までの全体像:準会員から正会員へ
| 段階 | 条件 | 会員資格 |
|---|---|---|
| 研究会員 | 第1次試験(基礎科目)の1科目以上に合格 | 研究会員 |
| 準会員 | 第1次試験(基礎科目)の5科目すべてに合格 | 準会員(第2次試験の受験資格を得る) |
| 正会員(アクチュアリー) | 第2次試験(専門科目)2科目に合格+所定の研修修了 | 正会員(フェロー・アクチュアリーを名乗れる) |
「アクチュアリー」として正式に認められるのは正会員です。第1次試験5科目に合格して準会員になり、第2次試験2科目に合格した上で「プロフェッショナリズム研修(初期教育)」「特定分野研修(初期教育)」を修了することで、理事会の承認を経て正会員資格が与えられます。2025年度の試験では全科目に合格し研修を修了した96名が正会員として承認され、正会員総数は約2,300名となっています。
第1次試験(基礎科目):5科目
| 科目 | 主な内容 |
|---|---|
| 数学 | 確率・統計・モデリング(確率論・統計学・各種数理モデル) |
| 生保数理 | 生命保険の数理(生命表・責任準備金・保険料計算の基礎と応用) |
| 損保数理 | 損害保険の数理(損害保険料率・支払備金・リスク理論の基礎と応用) |
| 年金数理 | 年金の数理(年金数理・年金財政の基本) |
| 会計・経済・投資理論(KKT) | 会計・経済・投資理論の基本(3分野を1科目で出題) |
第1次試験は「第2次試験を受けるに相当する基礎的知識を有するかどうかを判定する」試験で、全問マークシート方式です。教科書の範囲から出題されます。特に「数学的素養」が強く求められるため、数学を得意とする人は比較的早く突破できる傾向があります。第1次試験の受験資格は試験実施年度の3月31日時点で満18歳以上(大学卒業相当の学力を有する者)です。
第2次試験(専門科目):3コースから1コース選択
第1次試験5科目すべてに合格して準会員になると、第2次試験を受験できます。第2次試験は生保・損保・年金の3コースから1つを選び、それぞれ2科目を受験します。
| コース | 科目 | 対象分野 |
|---|---|---|
| 生保コース | 生保1・生保2 | 生命保険会社の商品開発・責任準備金評価・経営管理 |
| 損保コース | 損保1・損保2 | 損害保険会社の料率算定・支払備金・リスク管理 |
| 年金コース | 年金1・年金2 | 企業年金の制度設計・財政検証・年金数理人業務 |
第2次試験は「アクチュアリーとしての実務を行う上で必要な専門的知識および問題解決能力を有するかどうかを判定する」試験で、論述形式です。第Ⅰ部はアクチュアリーとしての専門知識(出題の約50%)、第Ⅱ部は問題解決能力など(約50%)が問われます。実務に直結した高度な内容で、第1次試験以上に難関とされます。2次試験のコース選択は早めに方向性を決めることが望ましいです。
試験の基本情報
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 試験方式 | CBT方式(第1次:マークシート / 第2次:論述形式) |
| 試験時間 | 各科目180分 |
| 実施時期 | 年1回・12月(2025年度は12月8日〜11日の4日間) |
| 受験料 | 1科目につき8,500円(税込) |
| 申込方法 | プロメトリック社のWebサイトでプロメトリックIDを取得し申込 |
| 申込期間 | 例年9月中旬〜10月上旬 |
| 合格発表 | 翌年2月中旬(2025年度試験は2026年2月16日) |
| 合格基準 | 科目ごとに合格基準点・最低ラインが設定される(不合格時は得点ランクを通知) |
| 年会費(参考) | 正会員:30,000円 / 準会員・研究会員:15,000円 |
| 主催 | 公益社団法人 日本アクチュアリー会 |
2026年度試験の見通し
| 項目 | 内容(参考:2025年度実績) |
|---|---|
| 申込期間 | 2026年9月中旬〜10月上旬頃(2025年度:9月16日〜10月8日) |
| 試験日 | 2026年12月頃(2025年度:12月8日〜11日) |
| 合格発表 | 2027年2月中旬頃(2025年度:2026年2月16日) |
2026年度の正式な試験日程は決定次第、日本アクチュアリー会の公式サイト(actuaries.jp)に掲載されます。アクチュアリー試験は年1回(12月)しか実施されないため、受験する年の学習計画を綿密に立てることが重要です。最新情報は必ず公式サイトで確認してください。
難易度:なぜ「超難関」なのか
アクチュアリー試験が超難関とされる理由はいくつかあります。
| 要因 | 内容 |
|---|---|
| 各科目の合格率が低い | 第1次・第2次ともに各科目の合格率は10〜30%程度。多くの受験者が複数回受験する |
| 科目数が多い | 第1次5科目+第2次2科目の計7科目すべてに合格する必要がある |
| 高度な数学力が必要 | 確率論・統計学・数理モデルなど大学数理系学部レベルの知識が基盤 |
| 働きながらの受験が中心 | 多くの受験者が保険会社等で働きながら受験。学習時間の確保が難しい |
| 長期戦になる | 全科目合格まで平均5〜10年。1次は1科目ずつ5年程度で合格を目指す人が多い |
1科目あたりの学習時間は300〜500時間が目安とされ、全7科目では2,000〜3,500時間以上の学習が必要です。1年で受験するのは平均2科目程度で、在職しながら数年かけて科目合格を積み重ねるのが一般的なルートです。それだけに、資格を取得したアクチュアリーは希少価値が高く評価されます。
アクチュアリーで開けるキャリア
生命保険会社
生命保険会社はアクチュアリーの最大の活躍フィールドです。保険商品の開発・保険料率の設定・責任準備金の評価・決算業務・経営管理など、生命保険事業の根幹を数理面から支えます。保険業法では生命保険会社に「保険計理人」の選任が義務付けられており、アクチュアリーがこの重要な役割を担います。
損害保険会社
損害保険会社では、自動車保険・火災保険・新種保険などの料率算定・支払備金の評価・リスク管理を担います。自然災害の増加・新しいリスク(サイバーリスク等)の登場により、損害保険分野のアクチュアリーの重要性は高まっています。
信託銀行・年金分野
信託銀行・年金コンサルティング会社では、企業年金制度の設計・財政検証・年金数理業務を担います。年金コースのアクチュアリーは、別途「年金数理人」の資格と合わせて企業年金の健全性を支える専門家として活躍します。少子高齢化により年金制度の持続可能性が問われる中、年金アクチュアリーの役割は重要性を増しています。
コンサルティングファーム・監査法人
アクチュアリーコンサルティングファーム・監査法人では、保険会社・年金基金へのアドバイザリー、M&Aにおける保険負債の評価、保険会社の監査支援などを担います。専門性の高いアクチュアリーは、コンサルタントとして高い報酬を得られるキャリアパスがあります。
リスク管理・ERM・新分野
近年はアクチュアリーの活躍の場が、伝統的な保険・年金分野を超えて広がっています。企業全体のリスク管理(ERM:Enterprise Risk Management)・データサイエンス・金融リスク管理など、確率・統計のノウハウを活かせる新しい分野でアクチュアリーの需要が増えています。
高収入と希少価値
アクチュアリーは取得が非常に難しいため有資格者が希少で、保険・金融業界で高く評価されます。正会員クラスのアクチュアリーは年収1,000万円を超えることも多く、専門職として安定した高収入を得られる職業です。準会員の段階でも資格手当・評価の対象となる企業が多く、試験勉強中から待遇面でのメリットがあります。
合格のための学習戦略
日本アクチュアリー会の公式教科書が基本
アクチュアリー試験の学習は、日本アクチュアリー会発行の各科目の公式教科書が基本教材です。第1次試験は教科書の範囲から出題されるため、教科書を徹底的に読み込むことが合格への第一歩です。各科目ごとに指定教科書・参考書が定められているため、最新の試験要領で確認しましょう。
過去問の徹底演習と計算問題の反復
アクチュアリー試験は過去問演習が極めて重要です。特に数学・生保数理・損保数理・年金数理は計算問題が中心のため、計算問題の演習量を徹底的に増やすことが合格の鍵です。過去問を繰り返し解き、解法のパターンを体に染み込ませましょう。ただし未出題の問題への対応も必要なため、教科書の理解を土台にした応用力も求められます。
勉強会・研究会・通信講座の活用
独学が基本ですが、受験対策勉強会・研究会への参加や、TAC等の通信講座の活用も有効です。先輩合格者のアドバイスは学習方針の修正に役立ちます。また日本アクチュアリー会正会員監修の模擬試験サービスもあり、本番に即した形式で実力を測ることができます。
科目の受験順序を戦略的に決める
第1次試験は1科目ずつ合格を積み重ねるのが一般的です。多くの受験者は数学から着手し、その後生保数理・損保数理・年金数理・会計経済投資理論へと進みます。自分の得意分野・キャリアの方向性(2次試験のコース選択)を見据えて、受験順序を戦略的に決めることが効率的な合格につながります。働きながら年2科目程度のペースで、5年程度での1次突破を目指す計画が現実的です。
よくある質問
Q. 文系出身でもアクチュアリーになれますか?
受験資格に学部の制限はないため、文系出身者でもアクチュアリーを目指せます。ただしアクチュアリー試験は高度な数学力(確率論・統計学)が必須のため、文系出身の場合は数学の基礎から学び直す必要があります。実際に文系出身のアクチュアリーもいますが、理系(特に数学・物理・工学系)出身者が多数を占めるのが実情です。数学に苦手意識がある場合は相当の努力が必要です。
Q. 大学生のうちから受験できますか?
はい、第1次試験は満18歳以上であれば受験できるため、大学生のうちから受験可能です。実際、就職前に第1次試験の科目合格を積み重ねる学生も増えています。学生のうちに科目合格しておくと、就職活動で保険会社等にアピールできるほか、入社後の負担も軽減されるメリットがあります。ただし第2次試験は実務的な内容のため、就職後に受験するのが一般的です。
Q. 非会員のまま受験を続けても大丈夫ですか?
注意が必要です。第1次試験に1科目以上合格した方は理事会の承認を得て入会することで会員になれますが、非会員のまま入会しなかった場合、合格した科目も次回受験時には「合格していないもの」とみなされます。つまり科目合格を有効に積み重ねるには、1科目合格した時点で入会して会員資格を得ることが重要です。入会後は年会費(研究会員15,000円)が必要になります。
まとめ
アクチュアリー(保険数理士)は、保険・年金・リスク管理分野で活躍する数理のプロフェッショナルであり、保険・金融業界で最高峰の専門職として評価されています。第1次試験5科目+第2次試験2科目の計7科目に合格し、所定の研修を修了することで正会員(アクチュアリー)として認定されます。
各科目の合格率は10〜30%、全科目合格まで平均5〜10年かかる超難関資格ですが、その分だけ有資格者は希少で高収入を得られます。試験は年1回(12月)・CBT方式・1科目8,500円で実施されます。数学的素養を土台に、公式教科書と過去問演習を徹底し、働きながら数年かけて科目合格を積み重ねる計画的な学習が合格への道です。最新の試験情報は日本アクチュアリー会の公式サイト(actuaries.jp)で確認してください。
