一級建築士

一級建築士

受験資格

建築系の学歴が必要
大学・短大・高専・専門学校の建築系学科卒

難易度

★★★★★
学科・製図の両方突破が必要。業界最難関クラス

勉強時間の目安

1,000〜1,500時間
学科700〜1,000h+製図300〜500h

合格率

学科:約20%
製図:約35〜40%。最終合格率は約10%

試験日・受験料

年1回・17,000円
学科:7月下旬。製図:10月上旬

転職需要

★★★★★
建築業界最高峰。すべての建築物の設計が可能

規模・用途を問わずあらゆる建築物の設計・監理を行うことができる、建築分野の最高峰国家資格が「一級建築士」です。住宅から超高層ビル・病院・学校・文化施設まで、すべての建築物に携わることができる唯一の資格として、建築業界で最も高い権威と信頼を持ちます。

学科試験と設計製図試験の両方に合格しなければならない難関資格ですが、2020年の制度改正で実務経験なしでも受験できるようになり、また2026年度からは学科試験で法令集の持ち込みが可能になるなど、制度が受験者にとって有利な方向に変わっています。

目次

一級建築士とはどんな資格か

一級建築士は、建築士法に基づく国家資格です。二級建築士が設計できる建築物に制限があるのに対し、一級建築士は規模・用途・構造にかかわらず、すべての建築物の設計・工事監理が可能です。延べ面積500㎡超の特殊建築物(学校・病院・劇場など)・高さ13mまたは軒高9mを超える建築物・延べ面積1,000㎡超の建築物は、一級建築士でなければ設計できません。

建築士の主な業務は設計と工事監理です。設計では建物の外観・内部空間・構造・設備を計画し設計図書を作成します。工事監理では設計図書通りに工事が進んでいるかを確認します。また近年は省エネ設計・耐震診断・BIM(建物情報モデリング)活用など、業務の幅が広がっています。

【重要】2026年度からの制度変更:学科試験に法令集の持ち込みが可能に

2026年度(令和8年度)の一級建築士試験から、学科試験(学科Ⅲ「法規」)に法令集の持ち込みが可能になりました。これまでは法規の条文を暗記して臨む必要がありましたが、この変更により法令集を参照しながら問題を解けるようになります。

ただし持ち込める法令集は2冊まで、付随する追録・訂正表等は追加可能ですが、書き込みや付箋に関しては別途規定があります。この変更は受験者にとって有利な方向性ですが、法規の問題はより実務的・応用的な内容にシフトする可能性もあるため、試験対策のアプローチも適切に変えていく必要があります。最新の試験要領はセンター公式サイトで必ず確認してください。

受験資格

2020年(令和2年)の建築士法改正により、一級建築士試験の受験資格から実務経験要件が撤廃されました。現在は学歴要件(または二級建築士資格)を満たせば、実務経験がなくても受験できます。

区分 主な要件
大学(4年制) 建築・土木系の指定科目を修了して卒業した者
短大・高専(3年制) 建築・土木系の指定科目を修了して卒業した者
専門学校(2年制以上) 建築系の指定課程を修了した者
二級建築士 二級建築士の免許取得者

なお、試験合格後に一級建築士として免許登録するには、別途2年以上の実務経験が必要です。在学中や入社直後に試験に合格した場合でも、登録は実務経験を積んでからとなります。

試験の基本情報

項目 内容
受験資格 建築系の学歴(大学・短大・高専・専門学校)または二級建築士
受験料 17,000円(非課税)+事務手続手数料
学科試験日 例年7月第4日曜日(2026年度:7月26日予定)
製図試験日 例年10月第2日曜日(2026年度:10月11日予定)
申込期間 例年4月上旬〜中旬
学科合格発表 例年9月上旬
最終合格発表 例年12月下旬
学科免除 学科合格後5年以内の試験のうち3回まで免除可能
主催 公益財団法人 建築技術教育普及センター

試験の構成:学科試験と設計製図試験

学科試験(5科目・125問・四肢択一)

学科試験は1日で5科目を受験します。各科目と試験時間は以下のとおりです。

科目 問題数 試験時間 主な内容
学科Ⅰ(計画) 20問 120分(計画・環境設備合算) 建築史・建築計画・建築設備計画など
学科Ⅱ(環境・設備) 20問 温熱・光・音・空調・給排水・電気設備など
学科Ⅲ(法規) 30問 105分 建築基準法・建築士法・消防法など(法令集持込可)
学科Ⅳ(構造) 30問 165分(構造・施工合算) 構造力学・各種構造(RC・S・木造)・耐震など
学科Ⅴ(施工) 25問 工事の施工方法・品質管理・工程管理など

合格基準は「各科目が過半の得点かつ総得点が概ね90点程度」とされており、足切りラインを全科目クリアしたうえで総得点が基準に達することが必要です。学科に合格した年から5年以内の試験で3回まで学科免除を受けられるため、学科合格後は製図試験に専念できます。

設計製図試験(390分・1課題)

設計製図試験は、事前に公表される課題の建築物について実際に設計図書(平面図・断面図・立面図・伏図など)を手書きで作成する試験です。試験時間は390分(6時間30分)と長く、限られた時間の中でエスキス(設計の方針立案)・図面作成・チェックを完結させる高度な実践力が求められます。

採点結果はランクⅠ〜Ⅳの4段階で評価され、ランクⅠのみが合格となります。合格率は35〜40%前後ですが、学科試験を突破した受験者の中でも約6割が不合格となる難しさです。

一級建築士で開けるキャリア

設計事務所・ゼネコンでのキャリアアップ

一級建築士は建築業界における最高峰の資格として、設計事務所・ゼネコン(総合建設会社)・ハウスメーカーでのキャリアに直結します。特に大型建築プロジェクト(オフィスビル・病院・商業施設など)のプロジェクトマネージャー・設計責任者として活躍するには一級建築士が事実上必須です。資格手当として月額1〜5万円を設定している企業も多く、管理職・プロジェクトリーダーへのキャリアアップにつながります。

独立開業

一級建築士事務所を開設することで独立開業できます。個人住宅から大型商業施設まで幅広い設計依頼を受けられるほか、建築確認申請の代行・リノベーション設計・インテリアデザインなど、業務の幅は非常に広いです。建築士事務所を開設するには都道府県への登録が必要ですが、要件は比較的シンプルです。

不動産・施設管理・行政での活用

デベロッパー・不動産会社・施設管理会社・地方自治体でも一級建築士は高く評価されます。建築物の新築・改修・維持管理の判断・耐震診断・インスペクション(建物調査)など、建築の専門知識を持つ人材のニーズは多岐にわたります。また経営事項審査(公共工事の入札資格審査)では一級建築士が在籍することで企業の評点が加算されるため、建設会社にとって「持っているだけで会社に貢献できる資格」でもあります。

難易度・勉強時間の目安

一級建築士試験は学科・製図の2段階構成で、それぞれに専用の対策が必要です。学科試験の合格率は約20%ですが、合格後の製図試験でさらに約6割が不合格となるため、最終的な合格率は約10%程度と非常に難関です。

試験区分 勉強時間 学習期間の目安
学科試験(二級建築士取得者) 500〜700時間 6ヶ月〜1年
学科試験(建築系学部卒・実務経験あり) 700〜1,000時間 1〜1.5年
設計製図試験 300〜500時間 2〜3ヶ月(学科合格後)

合格のための勉強法

学科試験:科目ごとの特性に合わせた対策

学科試験5科目は性格が異なります。法規は暗記より条文の読み方に慣れる練習が重要で、2026年度から法令集持込可となったことで問題の傾向が変わる可能性があります。構造は構造力学(計算問題)と各種構造の暗記に分かれ、計算問題は1問あたりの点数が大きいため確実に得点できるよう練習が必要です。計画・環境設備は暗記中心、施工は実務知識と暗記の組み合わせです。過去問の繰り返し演習が最も有効な学習法で、特に法規・構造・施工に時間を多く割くことが合格率を高めます。

設計製図試験:エスキスと作図の両方を鍛える

設計製図試験の合否は「エスキス(設計方針の立案)」と「作図速度と精度」の2点で決まります。エスキスは与えられた条件(敷地条件・要求室・構造種別など)を読み解き、短時間で最適なプランを立案する思考力が必要です。作図は平面図・断面図・立面図・伏図などを手書きで素早く正確に描く練習が必要で、これは繰り返しの実技訓練なしには身につきません。製図試験は独学での合格が難しく、資格学校の製図講座(生添削・模擬試験)を活用することが合格への現実的なルートです。

独学 vs 通信講座 vs 資格学校

学科試験は独学でも合格できる方がいますが、製図試験は資格学校・通信講座の活用が事実上必須です。特に製図試験は手書きの実技練習と添削が不可欠で、独学では対策が極めて困難です。

講座名 費用目安 特徴
スタディング 約30,000〜60,000円(学科) 学科に特化した低コスト通信講座。スマホ完結型
TAC 約200,000〜350,000円(学科+製図) 大手資格学校。製図講座の的中率が高いと評判
総合資格学院 約500,000〜700,000円(学科+製図) 業界最大手。合格者占有率が高く、充実した指導体制
日建学院 約400,000〜600,000円(学科+製図) 全国展開。個別指導・模試が充実

よくある質問

Q. 二級建築士を先に取るべきですか?

受験資格の観点では、建築系学科を卒業していれば二級建築士を経ずに直接一級建築士を受験できます。ただし、二級建築士の試験内容(特に設計製図)は一級建築士の準備として非常に有効で、二級建築士合格後に一級建築士を目指すルートは多くの受験者が選んでいます。特に製図試験の手書き経験を積む観点から、二級建築士を先に取得するメリットは大きいです。

Q. 試験合格後すぐに一級建築士として仕事ができますか?

試験合格後、免許登録のためには2年以上の実務経験(建築設計・工事監理などの業務)が必要です。実務経験が未達の場合は、経験を積んでから登録申請します。実務経験を積みながら試験勉強をしている方が多く、合格後すぐに登録できるように準備しておくことが理想的です。

Q. 2026年の法令集持込可の変更で、試験の難易度は下がりますか?

単純に難易度が下がるとは言い切れません。法令集を参照できるようになることで条文の検索速度は上がりますが、問題自体がより実務的・応用的になる可能性があります。また法規の試験時間は105分と短く、全問を法令集で確認しながら解く時間的余裕はないため、基本的な条文の理解は引き続き必要です。

まとめ

一級建築士は、建築設計の分野で唯一すべての建築物に関われる最高峰の国家資格です。学科・製図の2段階試験と1,000〜1,500時間の学習が必要な難関ですが、合格後の建築業界での評価・収入・キャリアの可能性は格段に広がります。

2026年度から法令集持込可という制度変更があり、法規の学習アプローチにも変化が求められます。早めに学習を開始し、特に製図試験は資格学校の活用も視野に入れながら、着実に準備を進めていきましょう。

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