建設業界での就職やキャリアアップを考えているなら、避けては通れない非常に重要な資格があります。それが「建設業経理士」です。
一般の簿記(日商簿記など)とは異なり、建設業特有の「未成工事支出金」や「完成工事原価」といった専門的な勘定科目を扱うこの資格は、業界内で非常に高く評価されます。
この記事では、建設業経理士の概要から難易度、そしてなぜこの資格が公共工事の入札を行っている企業において有利に扱われるのか、その理由を詳しく解説します。
建設業経理士とは?

建設業経理士とは、一般財団法人建設業振興基金が実施する検定試験に合格した人に与えられる称号です。正確には、級によって呼び方が異なります。
- 1級・2級: 建設業経理士(プロフェッショナルとして認定)
- 3級・4級: 建設業経理事務士(経理の基礎知識を有する者として認定)
| 級 | レベルと対象 |
| 1級 | 財務諸表・原価計算・財務分析の3科目に合格が必要。経営管理や高度な分析ができるレベル。 |
| 2級 | 建設業の簿記・原価計算・会社会計を理解し、実務を網羅的にこなせるレベル。 |
| 3級 | 建設業簿記の仕組みを理解し、基本的な仕訳や帳簿記入ができるレベル。 |
| 4級 | 初歩的な建設業簿記を理解し、伝票処理などができる入門レベル。 |
各級の難易度と合格率
建設業経理士の試験は、級が上がるごとに難易度が大きく跳ね上がります。特に1級は科目合格制度(5年間の有効期限)があるほど専門性が高いのが特徴です。
| 級 | 合格率(目安) | 必要な学習時間 | 難易度のイメージ |
| 1級 | 10% 〜 30% | 500〜1,000時間 | 日商簿記1級〜2級の中間以上 |
| 2級 | 30% 〜 50% | 150〜300時間 | 日商簿記2級と同等だが、計算量が多い |
| 3級 | 60% 〜 80% | 50〜100時間 | 日商簿記3級より少し専門的 |
| 4級 | 80%以上 | 20〜30時間 | 初心者でも短期間で合格可能 |
近年、1級・2級の合格者は「登録講習」を5年ごとに受講することが義務付けられました(経営事項審査の加点対象となるため)。2026年現在、最新の会計基準に対応し続ける意欲も問われています。
建設業経理士の受験資格
建設業経理士(1級〜4級)には、学歴、年齢、性別、国籍、および実務経験などの制限は一切ありません。
そのため、以下のような受験の仕方も可能です。
- 簿記初心者だが、いきなり経審加点対象の「2級」から挑戦する
- 実務経験はないが、学生のうちに最高峰の「1級」を取得する
- 他の資格(日商簿記など)を持っていなくても、好きな級からスタートする
なぜ建設会社は「2級以上」を欲しがるのか?

建設業経理士が他の資格と決定的に違うのは、「その人が会社にいるだけで、会社が受注できる工事のランクが上がる可能性がある」という点です。
これを理解する上で欠かせないのが、公共工事の入札に関わる「経営事項審査(経審)」です。
公共工事入札における具体的評価
国や自治体の公共工事を受注したい会社は、毎年「経営事項審査」という通知表のような審査を受けます。この審査で得点(P点)が高いほど、大きな工事に応札できます。
建設業経理士の保有者がいると、この審査の「社会性等(W点)」という項目で、会社に点数が加算されます。
- 1級建設業経理士: 1名につき 1点 加点
- 2級建設業経理士: 1名につき 0.4点 加点
「たった1点?」と思うかもしれませんが、会社全体の評点に直結するため、中小建設会社にとってこの点数は非常に重みがあります。そのため、2級以上の保持者は就職・転職市場で評価が上がります。
就職・実務における有用性
点数計算だけでなく、実務やキャリアにおいても大きなメリットがあります。
- 資格手当が期待できる
- 建設会社によっては、2級で月5,000円〜1万円、1級なら2万円以上の資格手当を支給しています。
- 業界特有の用語が理解できる
- 「JV(共同企業体)の会計」や「工事進行基準」など、一般の簿記では学ばない知識が身につくため、入社直後から即戦力として重宝されます。
- キャリアの安定性
- 建設業は全国どこにでもある産業です。この資格があれば、地元の中堅ゼネコンから都市部の大手建設会社まで、転職の幅が大きく広がります。
何級を目指すべきか?
就職・転職を有利にするなら「2級以上」が必須です。
学生・未経験の方:まずは3級で基礎を固め、そのままの勢いで2級まで取得するのが最も効率的です。履歴書に書いて評価されるのは2級からです。
現職の経理担当・キャリアアップ狙いの方:1級を目指しましょう。1級保持者は非常に希少で、経営幹部候補や財務スペシャリストとして迎えられるケースが増えています。

