使われていない土地(遊休地)を活用して太陽光パネルを設置したいと考える方が増えています。特に、初期投資に対する安定収益が見込めることから、中小企業や個人事業主にとっても魅力的な事業形態の一つです。
しかし、ソーラーパネルの設置は「土地があればすぐできる」ものではありません。設置にはさまざまな許可や届け出が必要で、地域によっては法規制も異なります。
本記事では、遊休地に太陽光発電設備を設置する際に確認すべき許可・法規制・注意点をわかりやすく解説します。
ソーラーパネル設置前に確認すべきこと

土地の用途地域と地目の確認
まず確認すべきは、その土地が太陽光発電に利用できるかどうか。土地の「用途地域」や「地目」によっては、設置が制限されているケースがあります。
- 市街化調整区域:原則として建物や工作物の設置ができません。許可が必要。
- 農地:農業以外の用途で使うには農地転用許可が必要です。
- 山林・原野:保安林や保全地域など、特別な制限があることも。
地形・日照・接続可能性の確認
土地の傾斜・方角・周囲の遮蔽物なども発電効率に影響します。また、電力会社との系統接続(送電網への接続)が可能かどうかも事前に確認が必要です。
発電効率が高くても、送電できなければ収益化は難しくなります。
必要な許可・届け出とは?

農地に設置する場合:「農地転用許可」が必要
農地に太陽光発電設備を設置するには、原則として農地転用の許可(または届出)が必要です。
- 一時的に使用する場合:一時転用許可
- 恒久的に地目変更する場合:地目変更と転用許可
特に市街化調整区域内の農地は、転用許可が厳しく制限されるため、事前に農業委員会などに相談を。
都市計画区域内:「建築確認」が必要なケースも
設置する太陽光設備の規模や構造によっては、「工作物」として建築確認が必要なケースがあります。
- 高さが2mを超える架台
- コンクリート基礎がある設備
- 大規模なフェンス・建屋の併設
設置工事を行う際には、建築士や行政書士を通じて確認申請が必要になることがあります。
50kW以上の場合:「事業計画認定」の届出(FIT制度関連)
50kW以上の「低圧連系太陽光発電」は、経済産業省への事業計画認定申請が必要です。これは再生可能エネルギーの固定価格買取制度(FIT)を活用するための前提条件でもあります。
- 再エネポータルでの電子申請
- 保安規程・技術基準の適合
- 電力会社との連系契約 など
その他に注意すべき法律・条例
森林法・景観法・環境影響評価条例など
設置予定地が山林や森林地域に該当する場合、森林法による「林地開発許可」が必要なケースがあります。
また、自治体によっては独自の景観条例や太陽光発電規制条例が定められており、以下のような条件に該当する際には届け出や事前協議が必要です。
- 景観保護地区
- 土砂災害警戒区域
- 風致地区や文化財近隣
災害リスクと保険・安全対策
設置後に土砂崩れやパネルの飛散などが起こると、人命被害や賠償責任につながる可能性も。
あわせて、損害保険や設備の定期点検体制についても検討しておきましょう。
太陽光パネルを規制する条例がある自治体もある
条例により太陽光パネルの設置に規制をかけている自治体もあるので注意が必要です。
許可申請は誰に相談すればいい?

行政書士・土地家屋調査士・建築士などの役割
許可申請や届出業務は、行政書士や土地家屋調査士などの専門家が対応します。
- 土地の用途確認・図面作成 → 土地家屋調査士
- 各種許可申請・届出 → 行政書士
- 建築確認や構造設計 → 建築士
複数の法令が絡むため、トータルで相談できる事業者に依頼することが重要です。
ソーラー事業者に「丸投げ」はリスク大
中には「すべて代行します」という業者もいますが、説明責任を果たさないまま設置を進め、違反となる例も少なくありません。
発電ができなくなるだけでなく、補助金の返還・撤去命令・損害賠償に発展するケースも。必ず契約書や許可状況を確認しましょう。
設置後も求められる維持管理・報告義務
フェンス設置・標識掲示の義務
ソーラーパネルを設置した後は、以下のような維持管理義務も課せられます。
- 発電施設の敷地にフェンスを設置(第三者の侵入防止)
- 発電所の名称・出力・管理者名を示す標識の設置
これらを怠ると、経産省から指導・改善命令を受ける可能性があります。
発電実績の報告や保守点検記録
FIT制度を活用している場合、毎年の発電量の報告や保守点検の記録提出が求められます。
報告義務を怠ると、買取価格の打ち切りや認定の取り消しが行われる場合もありますので注意が必要です。
まとめ:遊休地活用は慎重に。まずは「調査」と「許可」から
遊休地にソーラーパネルを設置するのは、うまくいけば長期にわたる安定収益につながる有効な活用方法です。
しかしその一方で、法令遵守を怠ると、撤去や損失リスクが非常に大きいという側面もあります。
最初の段階でしっかりとした調査と計画、そして必要な許可・届出の確認を行い、専門家と連携して安全かつ確実に進めましょう。
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