家庭用エアコンの設置から、オフィス・店舗の業務用空調設備まで、エアコン工事の需要は非常に安定しています。個人事業主としての独立や、法人としての事業拡大を目指す際、必ず直面するのが「建設業許可は必要なのか?」という問題です。
「うちは小規模な工事がメインだから大丈夫」と思っていても、実は知らぬ間に法令違反のリスクを冒しているケースも少なくありません。
この記事では、エアコン工事における建設業許可の要否と、併せて知っておくべき周辺知識を行政書士が解説します。
建設業許可が必要となる基本ルール

まず、建設業法における大前提を確認しましょう。エアコン工事を含む専門工事の場合、以下の金額基準が適用されます。
| 許可の要否 | 1件あたりの請負金額(税込) |
| 許可が不要 | 500万円未満の「軽微な建設工事」 |
| 許可が必要 | 500万円以上の建設工事 |
ここで非常に重要なのが、「500万円」の計算方法です。多くの業者が誤解しやすいポイントが3つあります。
注意点①:消費税込みの金額で判定
460万円(税別)の工事を受注した場合、10%の消費税を加えると506万円となります。この場合、建設業許可がないと請け負うことができません。
注意点②:材料費(機器代)を合算する
施主がエアコン本体を用意し、業者が「取付工賃のみ」で契約する場合でも、本体価格(市場価格)と工賃を合算して500万円を超えるかどうかを判断します。
注意点③:分割契約の禁止
500万円を超える工事を、100万円ずつ5回に分けて契約したとしても、実態として一つの工事であれば合算して判定されます(分割契約による制限逃れは禁止されています)。

エアコン工事は「管工事業」に該当する
エアコンの設置工事は、29ある建設業の業種のうち「管工事業」に分類されます。
管工事の定義:冷暖房、冷凍冷蔵、空気調和、給排水、衛生等のための設備を設置し、または金属製等の管を使用して水、油、ガス、蒸気等を送配するための設備を設置する工事。
エアコン工事においては、室内機・室外機の設置だけでなく、冷媒配管やドレン配管の施工、ダクトの設置などがメイン作業となるため、管工事業の許可が必要となります。
「附帯工事」として認められる範囲
管工事の許可を持っていれば、その工事に付随して発生する他業種の工事も、別途許可なく施工できる場合があります。これを「附帯工事」と呼びます。
- エアコン設置のための壁の穴あけ(コンクリート穿孔)
- 室外機を置くための軽微なコンクリート基礎
- 設置後の壁面の簡易な補修(内装)
配線工事などを行う場合は電気工事業登録が必要
エアコン工事を行う際には、建設業許可を取得とは別に、電気工事業の手続きも考えなければなりません。
たとえ建設業許可(管工事)を持っていたとしても、エアコンの電源配線やアース設置などの「電気工事」を行う場合は、金額に関わらず「電気工事業の登録」が別途必要になります。
| 制度 | 対象 | 目的 |
| 建設業許可(管工事) | 500万円以上の大型案件を請け負うため | 適切な施工能力と経営基盤の証明 |
| 電気工事業の登録 | 金額に関わらず配線等の電気工事を行うため | 電気火災等の事故防止(保安) |

無許可営業のリスクと許可取得のメリット

500万円以上の工事を無許可で請け負った場合、厳しい罰則が待っています。
- 刑事罰:3年以下の懲役または300万円以下の罰金。
- 社会的信用の失墜:罰則を受けると5年間は建設業許可が取れなくなります。また、元請け業者も「無許可業者に発注した」として行政指導を受ける可能性があるため、取引を打ち切られるリスクが非常に高いです。
許可を取得するメリット
- 大型案件の受注:機器代込みで500万円を超える業務用案件を受けられる。
- 元請けからの信頼:大手ゼネコンやハウスメーカーとの取引には許可が必須条件であることが多い。
- 資金調達に有利:銀行融資の際、許可証の写しを求められることがあり、経営の健全性の証明になります。
許可取得に向けて準備すべきこと
「自分も許可を取りたい」と思った場合、以下の要件を満たしているか確認しましょう。
- 経営業務の管理責任者: 建設業の経営経験が5年以上ある人がいるか。
- 専任技術者: 以下の資格保有者、または10年以上の実務経験者がいるか。
- 1級・2級管工事施工管理技士
- 1級・2級電気通信工事施工管理技士(一定の要件あり)
- 技術士(機械・水道など)
- 財産的基礎: 自己資本が500万円以上、または500万円以上の資金調達能力があること。
まとめ:業務用・大型案件を狙うなら早めの取得を
エアコン・設備工事において、1件の総額が500万円(税込)を超える場合は、必ず建設業許可(管工事業)が必要です。
特に業務用エアコンは機器代が高額なため、想像以上に早く「500万円の壁」に突き当たります。「あの時許可を持っていれば受注できたのに……」と後悔しないよう、将来的な業務拡大を見据えて早めに準備を進めましょう。

