エネルギー管理士(熱分野・電気分野)
受験資格
なし
学歴・年齢・実務経験すべて不問。免状取得には1年以上の実務経験が必要
難易度
★★★★
合格率34.4%(令和8年度)。選択した分野の4課目すべての合格が必要
勉強時間の目安
500〜800時間
一般的な目安。課目合格制度で複数年の計画も可能
合格率
34.4%(令和8年度)
新規受験者8,783名・合格者3,019名
試験・受験料
年1回(例年8月)・17,000円(非課税)
令和8年度は8月2日に実施・9月17日に合格発表済み。試験地は全国10地域
産業・カーボンニュートラル需要
★★★★★
一定規模以上の工場などで選任が必要。省エネ・脱炭素の流れで注目
工場・ビル・施設でのエネルギー使用を最適化し、省エネ・脱炭素を実現する専門家として法律で認定されているのがエネルギー管理士です。省エネルギー法(エネルギーの使用の合理化及び非化石エネルギーへの転換等に関する法律)に基づく国家資格で、大量のエネルギーを使う工場など(第一種エネルギー管理指定工場等)のうち製造業などの業種では、エネルギー使用量に応じた人数のエネルギー管理士を選任する必要があります。
企業の省エネ・脱炭素の取り組みが進む中、エネルギー管理士は製造業やエネルギー関連の仕事でのキャリアアップ資格として注目されています。令和8年度(2026年度)の試験は8月2日に行われ、合格率は34.4%でした。この記事では、2つの取得ルート、試験の課目と時間、課目合格制度、勉強の進め方をまとめます。
エネルギー管理士とはどんな資格か
エネルギー管理士は、工場・事業所におけるエネルギーの使用方法の改善・監督を行う専門家を認定する国家資格です。経済産業大臣が免状を交付する資格であり、実施機関は一般財団法人省エネルギーセンター(ECCJ)です。
エネルギー管理士が対象とするのは、鉱業・製造業・電気供給業・ガス供給業・熱供給業の5業種に属する工場・事業所のうち、年間エネルギー使用量が一定規模以上の「第一種エネルギー管理指定工場等」です。これらの施設ではエネルギー管理士の選任が法的義務となっており、有資格者は製造業・エネルギー産業での重要な法定専門職として位置づけられています。
資格取得の2つのルート
| ルート | 内容 | 向いている方 |
|---|---|---|
| ①国家試験合格ルート | エネルギー管理士試験に合格後、1年以上の実務経験を証明して経済産業大臣に免状交付申請 | 実務経験が1年未満の方・学生・現場経験を積みながら資格取得を目指す方 |
| ②エネルギー管理研修修了ルート | エネルギーの使用の合理化に関する実務に3年以上従事後、エネルギー管理研修を受講し修了試験に合格。その後免状交付申請 | 実務経験3年以上あり・省エネ業務に携わっている現場の方 |
3年以上の実務経験がある方は、研修ルートも選択肢になります。研修の日程や受講の条件は、省エネルギーセンターのウェブサイトで確認してください。
試験の基本情報
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 受験資格 | なし(学歴・年齢・国籍・実務経験すべて不問) |
| 受験料 | 17,000円(非課税)※旧制度免状取得者で課目免除を受ける場合は10,000円 |
| 試験形式 | 筆記試験(マークシート方式) |
| 分野の選択 | 熱分野と電気分野のいずれか一方を選択して受験(両方同時受験は不可) |
| 試験頻度 | 年1回(令和8年度は8月2日(日)) |
| 申込期間 | 例年4月上旬〜6月下旬(インターネット・郵送) |
| 試験地 | 全国10地域(北海道・宮城県・東京都・愛知県・富山県・大阪府・広島県・香川県・福岡県・沖縄県) |
| 合格発表 | 令和8年度は9月17日(センターのウェブサイトに受験番号を掲載。合否通知書は郵送) |
| 合格基準 | 選択した分野の4課目すべてで、各課目の配点の60%以上 |
| 免状取得要件 | 試験合格後、エネルギーの使用の合理化に関する実務に1年以上従事していること(試験前後を問わない) |
| 実施機関 | 一般財団法人省エネルギーセンター(経済産業大臣指定試験機関) |
出典:一般財団法人省エネルギーセンター「第48回エネルギー管理士試験 受験案内」「エネルギー管理士試験 合格者発表」(確認日:2026年10月8日)
令和8年度(2026年度)第48回試験の日程と結果
| スケジュール | 日程 |
|---|---|
| 受験申込受付期間(インターネット) | 2026年4月6日(月)〜6月22日(月)(終了) |
| 試験日 | 2026年8月2日(日)(実施済み) |
| 合格発表 | 2026年9月17日(木)(発表済み) |
| 結果(新規受験者・課目免除を含む) | 受験者8,783名・合格者3,019名・合格率34.4% |
試験は年1回のみの開催です。次の令和9年度(2027年度)の試験を目指す方は、例年4月上旬〜6月下旬の申込期間に注意してください。申込期間を逃すと翌年まで待つことになるため、受験を決めたら早めに省エネルギーセンターの公式サイト(eccj.or.jp)で最新情報を確認し、申込期間内に手続きを完了させましょう。
熱分野 vs 電気分野:どちらを選ぶべきか
| 項目 | 熱分野 | 電気分野 |
|---|---|---|
| 専門課目(3科目) | ①熱と流体の流れの基礎 ②燃料と燃焼 ③熱利用設備及びその管理 |
①電気の基礎 ②電気設備及び機器 ③電力応用 |
| 主な出題内容 | 熱力学・流体工学・ボイラー・熱交換器・蒸気設備・燃焼理論・省エネ計算 | 電気理論・電力システム・変圧器・電動機・照明・電気加熱・省エネ計算 |
| 向いている方 | 化学・機械系エンジニア・ボイラー技士保有者・熱系設備の実務経験者 | 電気系エンジニア・電験三種保有者・電気設備の実務経験者・電気工事士保有者 |
| 課目の免除 | 課目合格による免除(3年以内)と、旧制度の「熱管理士」「電気管理士」の免状取得者に対する免除だけ(他の資格による免除はない) | |
自分の実務経験・バックグラウンドに近い分野を選ぶことが合格への近道です。電気系エンジニアには電気分野が、熱・化学・機械系のエンジニアには熱分野が向いています。なお、電験三種などの資格を持っていても、エネルギー管理士試験の課目は免除されません。電験で学んだ知識は電気分野の学習に役立ちます。
4課目の構成と試験時間
| 課目 | 科目名 | 試験時間 | 分野 |
|---|---|---|---|
| 課目Ⅰ(必須) | エネルギー総合管理及び法規 | 80分 | 熱・電気 共通 |
| 課目Ⅱ(専門) | 熱分野:熱と流体の流れの基礎 / 電気分野:電気の基礎 | 熱:110分 / 電気:80分 | 選択した分野のみ |
| 課目Ⅲ(専門) | 熱分野:燃料と燃焼 / 電気分野:電気設備及び機器 | 熱:80分 / 電気:110分 | 選択した分野のみ |
| 課目Ⅳ(専門) | 熱分野:熱利用設備及びその管理 / 電気分野:電力応用 | 110分 | 選択した分野のみ |
試験は1日で4課目すべてを受験します(9:00〜17:40)。共通の課目Ⅰから始まり、熱分野はⅡ→Ⅳ→Ⅲ、電気分野はⅢ→Ⅳ→Ⅱの順に受験します。4課目すべてで各配点の60%以上の得点が必要で、1課目でも60%を下回ると不合格です。ただし課目合格制度により、合格した課目は3年間有効に活用できます。
課目合格制度:3年間かけた計画受験が可能
エネルギー管理士試験には課目合格制度が設けられています。一度の試験で4課目すべてに合格できなくても、基準点(60%以上)を満たした課目は合格課目として認定され、3年間有効です。
| 課目合格制度の仕組み | 詳細 |
|---|---|
| 有効期間 | 合格した試験が行われた年の初めから3年以内 |
| 活用方法 | 次回以降の試験で合格済みの課目が免除され、残りの課目のみ受験可能 |
| 注意点 | 同一選択分野(熱または電気)の受験が条件。分野を変えた場合、課目Ⅰの免除は条件付き(受験案内のQ&Aで確認) |
| 有効期限切れ | 3年を過ぎると合格課目も失効し、再受験が必要になる |
仕事をしながら学習時間が限られる社会人にとって、課目合格制度は非常に有効な戦略ツールです。例えば1年目に課目Ⅰ・Ⅱを合格し、2年目に課目Ⅲ・Ⅳを合格するという2年計画での取得も可能です。ただし3年以内に全課目合格できなかった場合は最初からやり直しになるため、計画的な学習ペース管理が重要です。
エネルギー管理士で開けるキャリア
製造業の省エネ・設備管理部門
鉄鋼・化学・食品・自動車・電子部品など、大量のエネルギーを消費する製造業の工場では、エネルギー管理士の選任が法的義務です。設備管理部門・環境部門・エネルギー管理部門での昇格・昇給・専門職認定において、エネルギー管理士の取得は評価につながりやすい資格です。資格手当の有無や金額は会社によって異なります。
電力・ガス・エネルギー供給会社
電力会社・ガス会社・熱供給会社などのエネルギー供給業も、エネルギー管理士の選任が必要な業種に含まれます。設備運用・保守管理・省エネ推進の専門職として役立つ資格です。
省エネコンサルタント・エネルギー診断士
企業のカーボンニュートラル推進・省エネ投資計画の策定・エネルギー診断(省エネルギーセンターによる工場エネルギー診断等)を担うコンサルタントとして独立・活躍できます。省エネ法改正や再生可能エネルギーへの転換支援など、脱炭素に関する相談も増えており、エネルギー管理士の資格は外部専門家としての信頼性の基盤になります。
ビル管理・ファシリティマネジメント
大型商業施設・オフィスビル・病院・ホテルなどのビル管理において、エネルギー使用量の最適化・電気・熱設備の管理効率化を担う専門職としても活用されます。ビル管理士・電験三種とのダブルライセンスで、ビルメンテナンス業界での高度なキャリアを構築できます。
官公庁・自治体のエネルギー政策部門
国・都道府県・市区町村の省エネ政策立案・エネルギー管理指導・再エネ導入計画策定部門でも、エネルギー管理士の専門知識は高く評価されます。公務員としてエネルギー政策に携わりたい方、民間から行政への転職を目指す方にも有効な資格です。
難易度と学習の進め方
エネルギー管理士の合格率は令和8年度で34.4%で、4課目すべてで60%以上という基準は決して低くありません。ただし「3人に1人が合格する試験」と考えると、適切な対策と学習時間を確保すれば十分に合格できる水準です。
| 受験者の背景 | 勉強時間の目安 | 学習期間の目安 |
|---|---|---|
| 電気・熱系の実務経験が豊富・電験三種等の関連資格保有 | 200〜400時間 | 6ヶ月〜1年 |
| 理工系出身・一定の実務経験あり | 400〜600時間 | 1〜1.5年 |
| 実務経験なし・文系出身・初学者 | 600〜800時間以上 | 1.5〜2年(課目合格制度を活用) |
上の表は一般的な目安で、個人差があります。
合格のための学習戦略
課目Ⅰ(エネルギー総合管理及び法規)は暗記中心で早期に固める
共通必須の課目Ⅰは省エネ法の条文・エネルギー情勢・省エネ計画の策定など、暗記が中心の科目です。法改正が毎年あるため、最新版のテキストで正確な知識をインプットすることが重要です。出題パターンが比較的安定しているため、過去問5〜7年分を繰り返すことで得点源にできます。
分野別専門課目は計算問題の演習が鍵
熱分野・電気分野の専門課目はいずれも計算問題が多く出題されます。公式の暗記だけでなく「なぜその式になるのか」という理論的背景の理解が、応用問題への対応力を高めます。電卓(関数電卓・数式を記憶できる電卓は不可。√キーは使える)を持ち込める試験のため、電卓を使った計算演習を本番に近い形で繰り返し練習することが効果的です。
省エネルギーセンターの公式テキスト・過去問を軸に
省エネルギーセンターが発行する過去問題の解答集や分野別の受験テキストが、出題範囲に沿った教材の基本になります。試験後には同センターのホームページに標準解答が掲載されます。過去問5年分を繰り返し解いて出題傾向を把握し、解けなかった問題をテキストで確認する学習サイクルが効果的です。苦手な課目は先行して学習を開始し、課目合格を積み重ねる戦略も有効です。
よくある質問
Q. 免状取得に必要な実務経験は試験前に積む必要がありますか?
いいえ、必要ありません。試験合格前・合格後のいずれに積んだ実務経験でも有効です。試験合格後に就職してエネルギー管理業務に1年間従事し、その後免状交付申請する流れでも問題ありません。ただし免状がないと正式な「エネルギー管理士」として選任されることはできないため、実務経験を積みながら早めに免状申請することをおすすめします。
Q. 電験三種(第三種電気主任技術者)を持っている場合、科目免除はありますか?
いいえ、ありません。エネルギー管理士試験の課目の免除は、①課目合格による免除(合格した年の初めから3年以内)と、②旧制度の「熱管理士」「電気管理士」の免状取得者に対する免除だけです。受験案内では、「第三種電気主任技術者を取れば講習を受けるだけでエネルギー管理士になれる」といった勧誘に注意するよう呼びかけています。ただし、電験で学んだ電気の知識は電気分野の学習に大いに役立ちます。
Q. ビル管理士(建築物環境衛生管理技術者)とどちらを先に取るべきですか?
目指すキャリアによります。ビル管理・設備管理の現場で幅広く活用したい場合はビル管理士から取得するのが実務に直結しやすいです。省エネ・エネルギー管理・カーボンニュートラルの専門家を目指すならエネルギー管理士が直結します。両方取得することで「エネルギー管理ができるビル管理のプロ」として大手ビル管理会社・エネルギー企業での高い評価が得られます。
まとめ
エネルギー管理士は、省エネ・脱炭素に取り組む製造業・エネルギー産業・コンサルティング分野で役立つ国家資格です。合格率34.4%(令和8年度)という難易度は、適切な準備と課目合格制度を活用した計画的な受験戦略で十分に突破できます。
令和8年度(2026年度)の試験は終わり、次は令和9年度の試験です(申込は例年4月上旬から)。まず自分が熱分野・電気分野どちらを選ぶかを実務経験・バックグラウンドから判断し、省エネルギーセンターの公式サイト(eccj.or.jp)で最新の受験案内を入手して学習計画を立てましょう。
