一級建築士
受験資格
指定科目の学歴か二級建築士など
大学・短大・高専・専修学校等で指定科目を修めて卒業/二級建築士/建築設備士
難易度
★★★★★
学科・製図の両方突破が必要。業界最難関クラス
勉強時間の目安
1,000〜1,500時間
学科700〜1,000h+製図300〜500h
合格率
学科:26.2%(2026年)
製図:35.0%・総合:11.4%(2025年)
試験日・受験料
年1回・17,000円
2026年:学科7月26日・製図10月11日
転職需要
★★★★★
建築業界最高峰。すべての建築物の設計が可能
規模・用途を問わずあらゆる建築物の設計・監理を行うことができる、建築分野の最高峰国家資格が「一級建築士」です。住宅から超高層ビル・病院・学校・文化施設まで、すべての建築物に携わることができる唯一の資格として、建築業界で最も高い権威と信頼を持ちます。
学科試験と設計製図試験の両方に合格しなければならない難関資格ですが、2020年(令和2年)の制度改正で、実務経験がなくても受験できるようになりました(実務経験は免許登録のときに必要)。2026年度(令和8年度)の学科試験の合格率は26.2%で、直近6年でいちばん高い合格率でした。
一級建築士とはどんな資格か
一級建築士は、建築士法に基づく国家資格です。二級建築士が設計できる建築物に制限があるのに対し、一級建築士は規模・用途・構造にかかわらず、すべての建築物の設計・工事監理が可能です。次のような建築物は、一級建築士でなければ設計・工事監理ができません(2025年(令和7年)4月1日施行の改正後)。
- 学校・病院・劇場・映画館・観覧場・公会堂・集会場(オーディトリアムを有しないものを除く)・百貨店で、延べ面積が500㎡を超えるもの
- 高さが16mを超えるもの、または階数が4以上のもの
- 鉄筋コンクリート造・鉄骨造など木造以外の構造で、延べ面積が300㎡を超えるもの
- 木造で、延べ面積が1,000㎡を超え、かつ階数が2以上のもの
2025年の改正で、二級建築士が設計できる範囲は「階数3以下かつ高さ16m以下」に広がりました(以前は高さ13m・軒高9mが境目)。都道府県の条例で別の制限がある場合もあります。
建築士の主な業務は設計と工事監理です。設計では建物の外観・内部空間・構造・設備を計画し設計図書を作成します。工事監理では設計図書通りに工事が進んでいるかを確認します。また近年は省エネ設計・耐震診断・BIM(建物情報モデリング)活用など、業務の幅が広がっています。
法令集の持ち込みルール(学科の法規・設計製図)
一級建築士試験では、法令集を試験会場に持ち込んで使えます。学科の試験では学科Ⅲ(法規)の問題を解くときに限り2冊まで、設計製図の試験でも2冊まで使えます。どちらも、その法令集に付いている追録・追補・訂正表などは追加できます。
ただし、使える法令集の種類や、書き込みの範囲には決まりがあります。条文を丸暗記する必要はありませんが、法規の試験時間は1時間45分で30問を解くため、法令集を素早く引けるように練習しておくことが得点の鍵です。
受験資格
2020年(令和2年)の建築士法改正により、一級建築士試験の受験資格から実務経験要件が撤廃されました。現在は次のいずれかに当てはまれば、実務経験がなくても受験できます。
| 区分 | 主な要件 |
|---|---|
| 建築に関する学歴 | 大学・短期大学・高等専門学校・専修学校等で、国土交通大臣が指定する建築に関する科目(指定科目)を修めて卒業した者(平成20年度以前の入学者は所定の課程を修めて卒業した者) |
| 資格 | 二級建築士、建築設備士 |
| その他 | 国土交通大臣が特に認める者(外国の大学を卒業した者など) |
なお、試験に合格しても、一級建築士として免許登録するには、学歴や資格に応じて定められた年数の実務経験が必要です(登録のときに審査されます)。必要な年数は、出身校の指定科目の修得状況などで変わるため、日本建築士会連合会の建築士登録のページや出身校で確認してください。
試験の基本情報
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 受験資格 | 指定科目を修めて卒業(大学・短大・高専・専修学校等)、二級建築士、建築設備士など |
| 受験手数料 | 17,000円(非課税)+ネット決済手数料 |
| 申込期間 | インターネットで受付(2026年度:4月1日〜4月14日) |
| 学科の試験 | 2026年度:7月26日(日) |
| 学科の合格発表 | 2026年度:9月2日(水) |
| 設計製図の試験 | 2026年度:10月11日(日) |
| 最終合格発表 | 2026年度:12月23日(水)予定 |
| 学科の免除 | 学科に合格すると、その後に行われる5回の試験のうち3回は、学科が免除され設計製図から受験できる(令和2年以降の学科合格者) |
| 主催 | 公益財団法人 建築技術教育普及センター |
試験の構成:学科試験と設計製図試験
学科試験(5科目・125問・四肢択一)
学科試験は1日で5科目を受験します。各科目と試験時間は以下のとおりです。
| 科目 | 問題数 | 試験時間 | 主な内容 |
|---|---|---|---|
| 学科Ⅰ(計画) | 20問 | 120分(計画・環境設備合算) | 建築計画・建築積算など |
| 学科Ⅱ(環境・設備) | 20問 | 温熱・光・音・空調・給排水・電気設備など | |
| 学科Ⅲ(法規) | 30問 | 105分 | 建築基準法・建築士法・消防法など(法令集持込可) |
| 学科Ⅳ(構造) | 30問 | 165分(構造・施工合算) | 構造力学・各種構造(RC・S・木造)・耐震など |
| 学科Ⅴ(施工) | 25問 | 工事の施工方法・品質管理・工程管理など |
配点は1問1点の125点満点です。合格基準点は「各科目は過半の得点、総得点は概ね90点程度」を基本の水準として、その年の難しさで調整されます。2026年度(令和8年度)は全体に難度が低かったため、計画11点・環境設備11点・法規16点・構造16点・施工13点・総得点94点で、すべての基準点に達した人が合格でした。学科に合格すると、その後に行われる5回の試験のうち3回は学科が免除されるため、合格後は製図試験に専念できます。
設計製図試験(390分・1課題)
設計製図試験は、事前に公表される課題の建築物について、設計図書を手書きで作成する試験です(2026年度の課題は「ホテル」で、7月24日に公表)。試験時間は390分(6時間30分)と長く、限られた時間の中でエスキス(設計の方針立案)・図面作成・チェックを完結させる高度な実践力が求められます。
直近5年(2021〜2025年)の製図の合格率は26.6〜35.9%で、学科を突破した人のうち3人に2人程度が不合格になる難しさです。
一級建築士で開けるキャリア
設計事務所・ゼネコンでのキャリアアップ
一級建築士は建築業界における最高峰の資格として、設計事務所・ゼネコン(総合建設会社)・ハウスメーカーでのキャリアに直結します。特に大型建築プロジェクト(オフィスビル・病院・商業施設など)のプロジェクトマネージャー・設計責任者として活躍するには一級建築士が事実上必須です。資格手当を設けている企業もあり、管理職・プロジェクトリーダーへのキャリアアップにつながります。
独立開業
一級建築士事務所を開設することで独立開業できます。個人住宅から大型商業施設まで幅広い設計依頼を受けられるほか、建築確認申請の代行・リノベーション設計・インテリアデザインなど、業務の幅は非常に広いです。建築士事務所を開設するには、都道府県知事の登録を受ける必要があります。
不動産・施設管理・行政での活用
デベロッパー・不動産会社・施設管理会社・地方自治体でも一級建築士は高く評価されます。建築物の新築・改修・維持管理の判断・耐震診断・インスペクション(建物調査)など、建築の専門知識を持つ人材のニーズは多岐にわたります。また経営事項審査(公共工事の入札資格審査)では一級建築士が在籍することで企業の評点が加算されるため、建設会社にとって「持っているだけで会社に貢献できる資格」でもあります。
難易度・勉強時間の目安
一級建築士試験は学科・製図の2段階構成で、それぞれに専用の対策が必要です。直近の試験結果は次のとおりで、学科は15〜26%、製図は27〜36%、総合の合格率は9〜11%程度で推移しています。
| 年 | 学科(受験者数→合格者数) | 学科の合格率 | 製図の合格率 | 総合の合格率 |
|---|---|---|---|---|
| 2026年(令和8年) | 29,094人→7,619人 | 26.2% | 12月23日発表予定 | — |
| 2025年(令和7年) | 27,489人→4,529人 | 16.5% | 35.0% | 11.4% |
| 2024年(令和6年) | 28,067人→6,531人 | 23.3% | 26.6% | 8.8% |
| 2023年(令和5年) | 28,118人→4,562人 | 16.2% | 33.2% | 9.9% |
| 2022年(令和4年) | 30,007人→6,289人 | 21.0% | 33.0% | 9.9% |
| 2021年(令和3年) | 31,696人→4,832人 | 15.2% | 35.9% | 9.9% |
勉強時間は、学歴や実務経験、二級建築士を持っているかで大きく変わります。下の表は一般的な目安です。
| 試験区分 | 勉強時間 | 学習期間の目安 |
|---|---|---|
| 学科試験(二級建築士取得者) | 500〜700時間 | 6ヶ月〜1年 |
| 学科試験(建築系学部卒・実務経験あり) | 700〜1,000時間 | 1〜1.5年 |
| 設計製図試験 | 300〜500時間 | 2〜3ヶ月(学科合格後) |
合格のための勉強法
学科試験:科目ごとの特性に合わせた対策
学科試験5科目は性格が異なります。法規は法令集を使えるため、暗記より条文の読み方と法令集を素早く引く練習が重要です。構造は構造力学(計算問題)と各種構造の暗記に分かれ、計算問題は1問あたりの点数が大きいため確実に得点できるよう練習が必要です。計画・環境設備は暗記中心、施工は実務知識と暗記の組み合わせです。過去問の繰り返し演習が最も有効な学習法で、特に法規・構造・施工に時間を多く割くことが合格率を高めます。
設計製図試験:エスキスと作図の両方を鍛える
設計製図試験の合否は「エスキス(設計方針の立案)」と「作図速度と精度」の2点で決まります。エスキスは与えられた条件(敷地条件・要求室・構造種別など)を読み解き、短時間で最適なプランを立案する思考力が必要です。作図は平面図・断面図・立面図・伏図などを手書きで素早く正確に描く練習が必要で、これは繰り返しの実技訓練なしには身につきません。製図試験は独学での合格が難しく、資格学校の製図講座(生添削・模擬試験)を活用することが合格への現実的なルートです。
独学 vs 通信講座 vs 資格学校
学科試験は独学でも合格できる方がいますが、製図試験は資格学校・通信講座の活用が事実上必須です。特に製図試験は手書きの実技練習と添削が不可欠で、独学では対策が極めて困難です。
| 学び方 | 向いている人 | 注意点 |
|---|---|---|
| 独学(市販の過去問集・法令集) | 二級建築士を持っている、建築系の学部で基礎ができている人の学科対策 | 製図は図面を添削してもらう機会がない |
| 通信講座 | 仕事が忙しく、スキマ時間で学科を進めたい人 | 製図の添削の回数・方法は講座ごとに違う |
| 資格学校(通学) | 製図で添削や模擬試験を受けながら練習したい人 | 費用が大きく、通学の時間も必要 |
講座の受講料や内容は年度ごとに変わるため、申し込む前に各講座の公式サイトで最新の情報を確認してください。
よくある質問
Q. 二級建築士を先に取るべきですか?
受験資格の観点では、指定科目を修めて卒業していれば、二級建築士を経ずに直接一級建築士を受験できます。ただし、二級建築士の試験内容(特に設計製図)は一級建築士の準備として非常に有効で、二級建築士合格後に一級建築士を目指すルートは多くの受験者が選んでいます。特に製図試験の手書き経験を積む観点から、二級建築士を先に取得するメリットは大きいです。
Q. 試験合格後すぐに一級建築士として仕事ができますか?
試験に合格しても、免許登録には学歴や資格に応じて定められた年数の実務経験(建築物の設計・工事監理などの業務)が必要です。実務経験が足りない場合は、経験を積んでから登録を申請します。実務経験を積みながら試験勉強をしている方が多く、合格後すぐに登録できるように準備しておくことが理想的です。
Q. 法令集があれば、法規の条文は覚えなくてもいいですか?
丸暗記は必要ありませんが、法規の試験時間は105分で30問と短く、全問を法令集で一から調べる時間はありません。よく出る条文の場所と内容を理解しておき、迷った問題だけ法令集で確かめられるようにしておくのが現実的です。
まとめ
一級建築士は、建築設計の分野で唯一すべての建築物に関われる最高峰の国家資格です。学科・製図の2段階試験と1,000〜1,500時間の学習が必要な難関ですが、合格後の建築業界での評価・収入・キャリアの可能性は格段に広がります。
2026年度(令和8年度)の設計製図の試験は10月11日、合格発表は12月23日(予定)です。2027年度(令和9年度)の試験を目指す方は、例年4月上旬の申込に向けて、公益財団法人 建築技術教育普及センターの公式サイトで最新の受験要領を確認し、早めに準備を進めましょう。特に製図試験は、添削を受けられる講座の活用も視野に入れると安心です。
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出典:建築技術教育普及センター「一級建築士試験」「受験資格」「試験について(時間割等)」「試験当日の注意事項」「試験結果」「建築士の種類と業務範囲・受験の流れ」(確認日:2026年10月10日)
出典:国土交通省「令和8年一級建築士試験「学科の試験」の合格者を決定」(2026年9月2日発表)、大阪市「一級建築士、二級建築士及び木造建築士の業務範囲」(建築士法第3条〜第3条の3)、滋賀県「建築士法改正の概要」(確認日:2026年10月10日)
