「名義貸し」は絶対NG!宅建業にまつわる法律違反とそのリスク

宅建業免許

宅建業の免許は、不動産取引の安全と信頼を担保するために設けられた制度です。しかし中には、免許を他人に「貸す」行為=名義貸しをしてしまう業者もいます。

名義貸しは、宅建業法で明確に禁止されており、重大な行政処分や刑事罰の対象になります。本記事では、名義貸しの定義・事例・罰則・リスクを解説し、どのようにすれば健全な宅建業運営ができるのかをお伝えします。


「名義貸し」とは何か?定義と具体例

法律上の定義(宅建業法 第11条)

名義貸しとは、他人に自己の名義で宅建業を営ませることです。宅建業法第11条では、宅建業者が「自己の名義をもって、他人に宅建業を営ませること」を禁止しています。

つまり、免許を持っている会社や個人が、実際には業務に関与せず、他者に営業活動を任せてしまうことが名義貸しに該当します。

よくある「名義貸し」の事例

  • 免許を持つA社が、B社に免許を貸して営業をさせる
  • 宅建士を登録したが、実際には現場にいない(見せかけの配置)
  • 実体のない会社を設立し、実際の業務は第三者が行っている
  • 知人や親族の会社に対して名義を使わせる

一見「手伝っているだけ」「事務所を貸しているだけ」と思っても、実質的に宅建業を他人が行っている場合、名義貸しと見なされます。


なぜ名義貸しが禁止されているのか?

消費者保護の観点

不動産取引には高額な金銭が関わります。名義貸しが行われると、トラブル発生時に責任の所在が不明瞭になり、消費者が不利益を被る可能性が高まります。

「取引相手がどの業者なのか分からない」「問い合わせ先がない」では、信頼できる取引は成り立ちません。

不正競争の温床になるため

名義貸しは、無許可営業の温床となります。宅建業免許を取得するためには厳格な要件がありますが、これを回避して営業することで、まじめに免許を取得している業者が不利になるという問題が生じます。

脱税や違法報酬の温床になることもあり、業界全体の健全性が損なわれます。

業界全体の信頼性を損なうリスク

不動産業界は、もともと「グレーな印象を持たれやすい」業種でもあります。

その中で、名義貸しが横行すると、業界全体の信頼が損なわれることにつながります。


名義貸しに対する罰則・行政処分

免許取消・業務停止処分の可能性

名義貸しが発覚した場合、免許の取消処分業務停止命令が科される可能性があります。特に、反復的・継続的に行っていた場合は、重い処分が下されやすい傾向があります。

5年以下の懲役または300万円以下の罰金

宅建業法第78条では、名義貸しを含む重大な違反行為に対し、5年以下の懲役または300万円以下の罰金、またはその両方が科される可能性があります。

さらに、法人の場合は両罰規定により、会社にも罰金が課されることになります。

関連者にも連座的に処分が及ぶ場合も

名義を「借りた側」も当然違反の当事者です。

さらに、名義貸しを黙認していた関係者(宅建士・管理者など)も処分対象となる可能性があります。


知らないうちに名義貸しと判断されるケース

委任状で「実質運営」を他者に任せた場合

形式的には自分の会社であっても、実質的な運営・意思決定を第三者に任せている場合、実質的支配が別にあると判断され、名義貸しと見なされることがあります。

事務所の管理を第三者に丸投げしている場合

宅建業には「専任の宅建士」が必要であり、事務所には営業所ごとに常駐する管理体制が求められます。

第三者に完全に任せてしまい、経営者や宅建士が実質的に不在であると、違反のリスクが高まります。

宅建士が常駐していないのに営業している場合

宅建士の登録はあるが、実際には他業務で外出ばかり、あるいは他の会社に勤めている場合などは、「名義のみの配置」と見なされるおそれがあります。


正しい宅建業の運営とは?

事務所要件・専任宅建士・実体のある営業活動

宅建業者は、法令で定められた事務所要件(独立性・継続使用など)を満たし、常勤の宅建士を配置したうえで、実体のある営業活動を行う必要があります。

宅建業者の名義と実質的経営者が一致していること

会社の代表者が責任を持ち、自らの意思で業務を統括・指揮する体制でなければなりません。「名前を貸しているだけ」という状態は、許されません。

他者に免許を貸したり、借りたりしない

いかなる理由があっても、免許を他者に使わせることは違法です。「助けてあげたい」「形だけだから大丈夫」といった安易な気持ちで関わると、自身の事業が取り返しのつかない状態になる可能性があります。


まとめ:リスクを知り、正しく免許を活用しよう

名義貸しは、軽い気持ちで関わってしまいやすい違反ですが、その代償は非常に大きいものです。

  • 宅建業免許の取消・刑事罰
  • 関係者全体への信用失墜
  • 今後の業界活動への重大な影響

宅建業免許は「信用の証」です。
正しく運用することが、自社の信頼と業界の健全化につながります。

コメント